激震、プロ野球界。


オールスター戦が終わったのを契機に、というわけではないですが、昨今のプロ野球界について風子の思うところを書きます。松井くんにはまる前は相当の野球ファンだった風子ですから、完全無視というわけにもいきません。といっても風子はトラが勝って野球(というかセントラル)が盛り上がればいいなという程度のスタンスで見ていたので、今回の騒動ももちろん近鉄オリックス合併の話が持ち上がってから知ったわけですが(風子の野球原点は高校野球です)。


世間的な流れはもう『10球団1リーグ制』という方向に向かいつつあり、最初は風子も「1リーグになるならなるでいいんじゃないか」と漠然と思っていました。選手会が反対しているのも、「オーナー連が話し合いをもってくれない、当事者である自分たちをないがしろにしている、選手がリストラされてしまう」という理由だけかと。
だけど、これをJリーグに照らし合わせるとそうも言ってられない気がしてきました。


現在16チームで戦っているサッカーJ1は、1993年に10チームでリーグをスタートさせ、94年に2チーム増えて、95年にさらに2チーム増、96年に2チーム増、97年1チーム増、98年1チーム増で合計18チーム、横浜フリューゲルス消滅などもありましたが99年にJ2発足、J1を16チーム、J2を10チームとしてきました。J2は00年に1チーム増、01年にさらに1チーム増となっており、両リーグ合わせて28チームが存在しています。その下にはJFL(日本フットボールリーグ、現在16チーム)以下以下、詳しいことはよくわかりませんが社会人チームや地域リーグがあるようです。来季からJ1が2チーム増の18チームになることを受けて、J1→J2降格1チーム、J2→J1昇格3チームとなり、おそらくJFL→J2昇格2チームだったりその下のリーグ→JFLも何チームかあることと思われます。


これを見てみるとまあ単純に考えて『Jリーグはチーム増ばかりだなあ』と思ったのです。そのわりに、野球は数には変動がない。まあ風子が物心つくだいぶだいぶ前からプロ野球は存在していますし、リーグ発足10年そこそこのJリーグと比べること自体おかしい話かもしれませんが、チーム数のことだけではなくプロ野球界にはどうしても『保守的』な感じを受けます。あれだけお金をかけても常勝になれないジャイアンツ、見たいと思わせる試合ができないために下がるジャイアンツ戦視聴率、それでも「ジャイアンツと試合をしたい」としか考えない他球団フロント、何かおかしい気がする。


風子は特に近鉄オリックスファンではないし、次に合併話が出ていると言われている球団のファンでもないので、まあ正直合併してもいいです。だけど、それによって球団数が減って1リーグになるということに野球界の危機感を感じる。だから『1リーグ制になるのは近鉄オリックス合併が火付けになった』ということなら、『ライブドア』(近鉄を買おうと言っている企業)の参画も検討してみる価値はあるんじゃないかと思います。
そもそも近鉄(もしくはパリーグ全体)が赤字経営だということは何年も前から知る人ぞ知るなところであって、もっと前から対策が必要だった。数年の順位低迷を我慢しても単価の安い若い選手を使うとか、観客数を増やすための努力をするとか。
その一環として今年1月には命名権売買(チーム名を売るということ)が解決策として提案されましたが、他球団の猛反発に遭い断念されています。風子はこのときもおかしいなあと思っていました。がんばってなんとかひねり出した金策をこんなにあっさり却下しておいて、その半年後には『2組合併、1リーグ制へ』というのは納得できない。しかも、選手会はこれについて「合併が強行されようとした場合は最終手段としてストライキを行う場合もありうる」とまで決議するに至っている。つまり選手会もぜんぜん納得していません。風子がただ何も知らないだけなら仕方ないけど(まあ現実そんなにいっぱい知っているわけではありませんが)、選手会長の古田くん(ヤクルト捕手)の言動を見るだけでも、このまま放っておいていい問題ではないことはわかる。


年間40億円の赤字を出しているといわれる近鉄を『ライブドア』が本当に買って経営していけるのか、ということになると、それもまた疑問です。資本金がいくら、保有現金がいくら、ということは大きく聞こえてきますが、『実質の経常利益は10〜15億そこそこだ』という話もありますし、はっきりしたことはわからない。本当に球団を経営してみてそれで結果が出るのかもしれない(悪い場合は目もあてられませんが)。だけど、まだそうやって手を挙げている企業もあるわけで、それを話し合いの場にも呼ばないで一方的にばっさり斬るだけじゃ反発を呼ぶのはあたりまえのように思います。お金もあって近鉄を好きだと言ってくれて、それでも『ライブドアじゃだめ』という理由を聞かせてもらいたい。それが正当な意見なら選手会だってファンだって納得できる、簡単なことだと思うのです、合併反対派の反発理由をひとつずつつぶしていくのは。でもそれをしないというのは、結局『正当な意見がない』ということじゃないのかなあ。


風子が敬愛するスポーツライター二宮清純氏いわく、1リーグになるとプロ野球界は衰退の一途をたどるそうです。まあそうなんだろうなと風子も思います。このまま何の対策もしないで経営難になったら新規参入も認めずに合併して縮小、というやり方でいけば、本当に野球がしたいひとは海外に目が向くだろうし、あるいはサッカーがそういうひとたちの受け皿になるのかもしれない。だってそもそも野球なんかなくてもひとは生きていけるもん。自分の居住区でフランチャイズしているわけでもなく、知り合いが選手をやっているわけでもないひとは、おもしろい野球を見たいなら高校野球で充分だと思うと思う。
そのフランチャイズ制を理念としているJリーグを真似て『1リーグ1部2部制度にしたらいい』という意見も読みましたが、それはまだ時期尚早ですよね。前述通りJの1部2部制というのは『フランチャイズありき』であって、現況の野球界ではまだうまくいかないと思う。二宮氏のご意見通り、「もし1リーグ10チームでやって、5月6月に頭抜けのチームができてしまったら、秋まではすべて消化試合になってしまう」。そのとき、9位対10位の試合でも見にきてくれるのはそのチームのフランチャイズのお客さんだけですよ。まして2部の試合なんて、知り合いしか見に行かない。だから1リーグ(+2部制)にするのは、フランチャイズ制が確立されて浸透して、それからだと風子は思う。今のオーナー見てると、その時代が来るのはもっとずっとずっと先なんだろうなと思いますが。


比べる基準としてはアメリメジャーリーグも引き合いに出されます。あっちのファンサービスや球場施設の充実やチケットの値段を聞いていると、家族連れで試合を見にきてもらおうという意図がよくわかる。日本のプロ野球なんて家族で見にいったら20000円はかかるそうですよ。こんなの年に1回見に行けばいいほうだ。ファン層の拡充努力を何もしない日本プロ野球界には、まだまだいくらでもやれることが残っているはず。
1リーグ制の最大のメリットとみられる『巨人対西武、阪神ダイエーなど新しいカードが誕生する』ということも、たまにしか見られないカードだからこそ日本シリーズが盛り上がるんだと思っている風子としてはいささか疑問であります。だって野球ってほぼ毎日やってるんですよ?どんな新しいカードだってそのうち見慣れるに決まってる。目先のたった1年ほどの『新しいカード』のためにリーグをひとつつぶしたら、復活させるのは容易なことではない。そうしたら、日本シリーズ挑戦権を獲得するためにリーグ優勝を狙い、自分の応援するチームが優勝したら相手チームがどこになるか興味津々で反対のリーグの結果を気にかける、ということもなくなり、結果プロ野球人気はすたれてしまう。自分の応援するチームが優勝できなくても、普段見れないカードだから日本シリーズを見る、というファンは、優勝戦線から応援チームが脱落したら運が悪ければ夏前からもう来年を待つしかなくなってしまう。


うーん、考えれば考えるほどよくわからない。なんにしても、ノリ(中村紀洋近鉄)や古田くんが悪く言われると本当に腹が立ちます。ノリの年間5億という年俸は、契約更改時には風子も「高っ!」と思いましたけれどもそれは契約であって、近鉄が了承したから成り立ったこと。彼の年俸を赤字の理由にしているなら契約するときにそういう話をすれば良かっただけだ。それでノリが「もっとお金を出してくれる球団に行く」と言えばあきらめるしかない。身の丈経営だよ。それを今になって「あいつの年俸がネックだ」っていうのはまったくおかしい話だと思う。もしもたたかれるとすれば、お金を支払うあてがない(赤字がかさんでいる)のにもかかわらずそういう内容で選手と契約を結んだフロントの方がそうあってしかるべきだ。だって年間1億でもあれば、どこかからいい選手(に育ちそうな選手)を探してくることはできたはず。
古田くんについては、もし10チーム1リーグ制になったとしたって、あのひとはなにも痛くない。自分はもう数年の現役生活をまっとうするだけだし、そのあとはヤクルト監督をやるだろうし、そのあとには解説者、タレント、食うに困るようなことにはぜったいならない。それなのにああやって矢面に立っているのは球界全体を思ってのことであって、しかも間違った意見は何も言っていない(というか『痛みを辞さない』という考えも持っているのに意見を言わせてももらっていない感じ。)。プロ野球OBや関係者がいろいろなしがらみから選手会を応援できないというなら周りが、球界からなんの圧力もダメージも受けないような無関係の周りが、もっともっと支えてあげなきゃいけないんだ。


せっかく見に行った試合でストライキされたら悲しいけれども、『労使交渉だからストをする権利はある』という意見には納得せざるを得ない。これはそれぐらい一大事な話なのですよ。本当にもっと議論すべき問題なのです。
(今日まじめに語っちゃったー)。